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剣道具・田代の製作メモ[一分五厘刺垂]

一分五厘刺垂
剣道具・垂の製作記録    平成18年05月


二分刺、一分五厘、一分二厘など、手刺しの剣道具は、たくさんの時間と人の手によって作られています。まるで伝統工芸のように温もりがあって、かつ機械生産にも劣らない緻密で繊細な表現、何よりも身につけた時の感覚に優れています。皆様も一度はあこがれる剣道具ではないでしょうか。

今回の製作メモは、小柄な女性に合わせた手刺の垂。信頼を寄せる垂屋の協力によって無事、完成しました。そこには布団刺しの内職さんなど、見えない方々の技術が集結しています。
この垂は、通常サイズよりも当然小さなものですが、お客様が着装しても貧弱に見えないように、全体のバランスに細心の注意を払いました。垂の額部分を大きくし、角皮を小さく調整したことにより、視覚的にも見栄えある垂に仕上がりました。

小柄な女性剣士によく見るのが、身体に合わない大きな防具。既製サイズではどうしようもないこともあり、この悩みをかかえている方は多いと思います。
防具一式を新調されたお客様は、出来上がった垂をご覧になり「ちょっと小さすぎないか」と、お感じになったようです。面、胴、甲手(小手)と合わせて鏡の前で構えていただきました。お客様は、着装時における全体バランスの美しさと、違和感のない踏み出し易さに、ご満足されました。私も、とても嬉しい瞬間でした。

今回の一分五厘刺垂は、このように作られてゆきました。
まず、垂の着装位置を確認しました。お客様は帯幅を狭くする必要がありました。深い呼吸から素早く力強い動作につなげるためには、キュッと丹田を引き締める帯である必要があります。

次に、ウエストが細いため、帯の長さを短くしました。帯は腰を押さえるもので、締め付けるような感覚がなく、動きやすいことが求められます。そして帯を短くしたことは、大垂が後方まで巻き付いてしまうことを防ぎます。

そして、帯の幅と長さを調整したことで、大垂三枚の寸法にも注意しました。通常サイズなら後方まで大垂が回ってしまい、逆に大垂の間隔を狭くすると動作に支障をきたします。スムーズに足を踏み出すためには、垂がお客様にぴったりと合ったものでなくてはなりません。小垂についても、お客様に合わせたサイズ取りをしました。
素材の選定に始まり、細かな寸法の指示に至るまで、的確に対応してくれた垂屋の技術、その布団の出来映えに賞賛したいと思います。私は、出来上がった実物の垂を見て、素直に思いました。もちろん垂をご注文いただいたお客様にも、大変喜んでいただきました。
垂の出来映えは布団に左右されます。布団のコシと柔らかさは、剣道具の使いやすさに結びつき、その芯材、真綿、加工技術に多くの剣士が魅了されています。

中でも手刺剣道具(面・甲手(小手)・垂など)の布団は全て、人の手によって作られています。生地の裁断に始まり、皮の加工、線引き、芯材の加工、仕込み、刺し、糸締めと幾つもの工程があります。一人で全ての工程を行うことは並大抵のことではありません。各工程に携わる多くの方々の技術の結集によって、ひとつの剣道具は出来上がります。

今回もまた、このような機会を与えてくださったお客様に、深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
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