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店主が想う 田代のこだわり

11. 職人の物差し「はかる」続編
私たち製作者には「はかる」という行為が、とても大切であることを、前回、申し上げました。
日本的スタイルの代表としてご紹介した昔の工業製品は、熟練工の知識と経験によって、力を「はかる」行為が施されたものでした。一方、当時世界でも有数の技術といわれていたアメリカの工業製品は、工具そのものが「力を計る」機械であったため、一定水準が保たれる完成度の高いものでした。
武道具の製作は、職人の勘所や気持ちに力加減が左右されやすく、その経験の延長線上においてのみ、結果が表れるような気がいたします。ですから、未経験の素材や構造に出会うと、手探りの状態で模索することがございます。

ここで私の体験を申し上げます。以前、海外で生産された面の修理依頼を受けたことがありました。顎の部分の強度が足りなかったことにより、すべての部品をバラバラにし、基礎から強度をあげて、面を組み直したことがありました。私たちが常日頃から製作している面のつもりで、縫い糸を引っ張ってしまったことにより、革が切れてしまったのです。とても困惑したことを覚えています。そのとき逆に「よくこの強度バランスで面を形成しているものだ」と感心もしました。
武道具の製作では、強度に対する数値化された基準がないことが、皆様にはお分かりいただけたかと思います。武道具の製作はどちらかというと、先にお話しいたしました、日本的スタイルを継承しているような気がいたします。ところが、武道具の設計図ともいうべき型紙においては「尺貫法に基づく」具体的な数値が存在しています。
尺貫法の長さの基本単位は、このようになっております。
■ 曲尺の一尺は、約30.3cm。寸の十倍にあたる。
■ 鯨尺の一尺は、曲尺の一尺二寸五分(約37.8cm)にあたる。

私たちは、主に剣道具の製作では曲尺を、袴の製作では鯨尺を使っています。それらのサイズ変更など仕様変更においては、皆様にも馴染みのあるメートル法を使っています。

尺という具体的な数値が存在する型紙からおこし、いよいよ組み上げていく段階では、製作者が代々受け継いでいる力の配分が、作業を大きく左右します。日本的スタイルの作業です。数値化された基準がありません。

「あとから引っ張られるから、あらかじめキモチ曲げて仮縫いする」とか「キモチ念を入れる」、「キモチ針を先送る」というような、曖昧な言葉「キモチ」という、実体のない「はかる」行為が、この作業を支配しています。
正直、新米だったころの組み上げ作業では、この「キモチ」という言葉を、私は、はかりかねていました。

さて「はかる」という言葉が、やっと出てきましたね。お後がよろしいようで。
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